酸素欠乏症と硫化水素中毒は、一度の事故で複数人が亡くなりやすい災害です。 救助に入った人まで倒れる二次災害が多く、試験でも防止措置の細部がよく問われます。 この記事では、酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)の条文をもとに、定義から措置までを整理します。

2つの数字:18%と10ppm

用語 定義(酸欠則2条)
酸素欠乏 空気中の酸素濃度が18%未満である状態
酸素欠乏等 酸素欠乏の状態、または空気中の硫化水素濃度が100万分の10(10ppm)を超える状態
硫化水素中毒 硫化水素濃度が10ppmを超える空気を吸入して症状が認められる状態

換気の目標は、この裏返しです。作業場所の酸素濃度を18%以上、第二種酸素欠乏危険作業では あわせて硫化水素濃度を10ppm以下に保つように換気します(酸欠則5条)。

覚え方のコツ

  • 酸素は18%以上、硫化水素は10ppm以下」。「未満」と「超える」が定義、「以上」と「以下」が保つべき状態
  • 数字の組み合わせを入れ替えたひっかけ(酸素16%、硫化水素5ppmなど)に注意

第一種と第二種の酸素欠乏危険作業

区分 場所の例 測定する物 作業主任者の技能講習
第一種 長期間使っていない井戸の内部、ケーブル・ガス管を収容する暗きょやマンホールの内部、相当期間密閉されていた鋼製タンクの内部、穀物や飼料を貯蔵するサイロの内部、ドライアイスを使う冷凍庫の内部など 酸素 酸素欠乏危険作業主任者技能講習 または 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
第二種 し尿・腐泥・汚水・パルプ液など腐敗・分解しやすい物を入れたことのある槽やマンホールの内部、海水が滞留したことのある熱交換器や暗きょの内部など 酸素と硫化水素 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習のみ

第二種は「腐る物・海水」がキーワードです。微生物による分解で硫化水素が発生するためです。

防止措置のチェックリスト

措置 内容
測定 その日の作業開始前に酸素(第二種は硫化水素も)の濃度を測定し、記録を3年間保存
換気 酸素18%以上(第二種は硫化水素10ppm以下も)に保つよう換気する。換気に純酸素を使ってはならない
保護具 換気できない・著しく困難な場合は、同時に就業する人数以上の空気呼吸器等(空気呼吸器・酸素呼吸器・送気マスク)を備えて使用させる
人員の点検 作業場所への入場時と退場時に人員を点検する
立入禁止 作業に従事する者以外の立入りを禁止し、その旨を表示する
監視人 常時作業の状況を監視し、異常を直ちに通報する者を置くなどの措置
退避 酸素欠乏等のおそれが生じたら直ちに作業を中止し、退避させる
救出時 救出作業に従事する労働者に空気呼吸器等を使用させる
教育 酸素欠乏危険作業に就かせるときは特別教育を行う

作業主任者は、作業方法を決定して労働者を指揮し、作業開始前・全員が離れた後の作業再開前・異常があったときに濃度を測定し、測定器具や換気装置・空気呼吸器等を点検します。

防毒マスクや防じんマスクは、酸素を補う機能がないため酸素欠乏の場所では使えません。 「防毒マスクを使用させた」という選択肢は典型的な誤りです。 また「純酸素で換気する」も誤りで、酸素濃度が高すぎると火災・爆発の危険があるため禁止されています。

酸素濃度と症状の目安

厚生労働省のリーフレットでは、酸素濃度と症状の関係を次のように示しています。

酸素濃度 症状
21% 通常の空気
18% 安全限界だが連続換気が必要
16% 頭痛、吐き気
12% めまい、筋力低下
8% 失神昏倒、7〜8分以内に死亡
6% 瞬時に昏倒、呼吸停止、死亡

硫化水素は腐った卵のような臭いがしますが、高濃度では嗅覚がまひして臭いを感じなくなるため、臭いで安全を判断してはいけません。 眼や気道の粘膜を刺激し、濃度が高くなると肺水腫や呼吸麻痺を起こして死に至ることがあります。

まとめ

  • 酸素欠乏は18%未満、硫化水素は10ppm超。保つべき状態は18%以上・10ppm以下
  • 第二種(腐る物・海水)は硫化水素も測り、酸素欠乏・硫化水素の技能講習修了者から作業主任者を選ぶ
  • 測定は作業開始前、記録は3年
  • 純酸素での換気は禁止、保護具は空気呼吸器等(防毒マスクは不可)

救助のために無防備で飛び込むことが二次災害の典型です。措置の一つひとつが「なぜ必要か」とセットで覚えると、細部を問う問題にも強くなります。