有機溶剤は、関係法令と労働衛生の両方の有害業務の範囲で出題される最重要テーマです。 この記事では、有機溶剤中毒予防規則(有機則)の条文をもとに、区分・設備・測定・健康診断をひとまとめに整理します。
有機溶剤の3区分と色分け
有機則の対象は、労働安全衛生法施行令 別表第六の二に掲げる有機溶剤と、有機溶剤を重量の5%を超えて含む混合物です。
| 区分 | 代表的な物質 | 表示の色 |
|---|---|---|
| 第1種有機溶剤等 | 1,2-ジクロルエチレン、二硫化炭素 | 赤 |
| 第2種有機溶剤等 | トルエン、キシレン、アセトン、メタノール、ノルマルヘキサン、酢酸エチルなど | 黄 |
| 第3種有機溶剤等 | ガソリン、石油ナフサ、テレビン油、ミネラルスピリットなど | 青 |
屋内作業場等で有機溶剤業務を行うときは、区分を色分けと色分け以外の方法で見やすい場所に表示します(有機則25条)。 あわせて、生じるおそれのある疾病の種類と症状、取扱い上の注意事項、中毒が発生したときの応急処置なども掲示します(有機則24条)。
覚え方のコツ
- 色は危険度の順に「赤・黄・青」。信号の「止まれ→注意→進め」と同じ並びです
- 第1種は2物質だけ。「ジクロルエチレンと二硫化炭素」をセットで覚える
- 第3種は石油系の混合物(ガソリン・ナフサ・テレビン油など)と覚える
なお、クロロホルム・トリクロロエチレン・スチレンなどは、発がんのおそれから**特定化学物質(特別有機溶剤)**として特化則で規制されています。 有機溶剤と同じ感覚で扱われる物質でも、区分表に載っていないものがある点に注意してください。
必要な設備
| 区分 | 屋内作業場等で必要な設備 |
|---|---|
| 第1種・第2種 | 発散源を密閉する設備、局所排気装置、またはプッシュプル型換気装置 |
| 第3種 | タンク等の内部での業務に限り、上記のいずれかか全体換気装置(吹付け作業は全体換気装置では不可) |
局所排気装置のフードは、次の制御風速を出せる性能が必要です(有機則16条)。
| フードの型式 | 制御風速 |
|---|---|
| 囲い式フード | 0.4 m/s |
| 外付け式(側方吸引型・下方吸引型) | 0.5 m/s |
| 外付け式(上方吸引型) | 1.0 m/s |
「囲い式がいちばん小さく、上方吸引型がいちばん大きい」と覚えます。 囲い式は発散源を囲い込むので弱い風速で足り、上から吸い上げる型は蒸気を捉えにくいので強い風速が必要です。
作業環境測定・健康診断・作業主任者
- 作業環境測定:6月以内ごとに1回、有機溶剤濃度を測定し、記録を3年間保存(有機則28条)
- 特殊健康診断:雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回。個人票は5年間保存。定期のものは労働者数に関係なく結果を報告します
- 有機溶剤作業主任者:有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任(試験・研究の業務は選任対象外)
特殊健康診断では、物質ごとに尿中の代謝物を調べます(有機則 別表)。
| 物質 | 尿中の検査項目 |
|---|---|
| トルエン | 馬尿酸 |
| キシレン | メチル馬尿酸 |
| ノルマルヘキサン | 2,5-ヘキサンジオン |
| N,N-ジメチルホルムアミド | N-メチルホルムアミド |
| 1,1,1-トリクロルエタン | トリクロル酢酸または総三塩化物 |
「トルエンは馬尿酸、キシレンはメチルが付く」とペアで覚えるのがコツです。
貯蔵と空容器
- 有機溶剤等を屋内に貯蔵するときは、栓をした堅固な容器を使い、関係者以外の立入りを防ぐ設備と、蒸気を屋外に排出する設備を設けます
- 蒸気が発散するおそれのある空容器は、密閉するか屋外の一定の場所に集積します
代表的な健康障害
有機溶剤は脂溶性で、蒸気の吸入だけでなく皮膚からも吸収されます。 共通の作用として、中枢神経の抑制(頭痛・めまい・意識障害など)や、皮膚・粘膜への刺激があります。 物質に特有の障害としては、ノルマルヘキサンの末梢神経障害、メタノールの視神経障害などがよく出題されます。
まとめ
- 区分は第1種(赤)・第2種(黄)・第3種(青)、第1種は2物質だけ
- 第1種・第2種は密閉・局所排気・プッシュプル、第3種はタンク内などで全体換気も可
- 制御風速は囲い式0.4、外付け0.5、上方吸引1.0(m/s)
- 測定は6月・3年保存、健診は6月・5年保存
区分と数字が頭に入ったら、「正しいものはどれか」型の問題で条文の細部まで確認しておきましょう。